ビル改修コラム

中小ビルの長期修繕計画で押さえておくべき3つの注意点

中小ビルの長期修繕計画で押さえておくべき3つの注意点
商業ビル、オフィスビルのオーナーであれば、常に建物の資産価値を気にされているかと思います。
建物は竣工後から劣化が始まり、資産価値は経年と共に下がります。
しかし、長期修繕計画をもとに、資金計画を立て、定期修繕や、デザイン性・機能性を向上させる修繕を行い、資産価値を向上させるメンテナンスを実施していれば、近隣に他のビルが建っても怖くはありません。
ようするに、他のビルと比較されても、「綺麗で使いやすいビルだなぁ」という評価をいただければ、空室を生まずに利益を確保できるのです。
本コラムでは、中小ビルに特化した長期修繕計画で押さえるべき4つのポイントをまとめました。
長期修繕計画の作成
中小規模の収益ビルの場合、長期修繕計画はビルオーナー様がご自身で作成される方も多いと思います。
テナントさんに安全で快適な空間を提供するためにも、しっかりと長期修繕計画を立てて、適切に実施していくことが大切です。
その際に参考になるのが、一般社団法人日本サステナブル建築協会(JSBC)が発行している「中小ビルの改修ハンドブック」や、国土交通省の「長期修繕計画ガイドライン」です。
また、一般社団法人日本ビルヂング協会連合会のウェブサイトには、長期修繕計画作成のためのエクセルテンプレートが掲載されていますので、利用してみましょう。
これらを利用しながら収益ビルの長期修繕計画を作成する際には、どのようなことに気を付けたらよいのでしょうか。
資金計画は必須
「中小ビルの改修ハンドブック」や「長期修繕計画ガイドライン」に沿って収益ビルの長期修繕計画を立てる際には、資金計画も同時に考えていくことがとても重要です。
長期修繕計画に合わせてビル改修にかかる修繕費を積み立てていたとしても、場合によっては将来的に資金がショートする可能性もゼロとは言えません。
長期修繕計画通りにビル改修をする際の費用が足りなければ、借り入れが必要になります。
しかし、ビルオーナー様が借り入れを恐れて適切なビル改修を実施しなければ、建物の劣化が進んでしまい、建物の劣化によるトラブルが増えればテナント退去につながり収益が減少します。
このような負の連鎖を起こさないためにも、長期修繕計画通りに修繕工事を行えるようにしっかりと資金計画を練っておきましょう。
長期修繕計画は定期的に見直す
建物は、経年とともに外壁の劣化や、設備の老朽化が生じるのは自然なことです。
一方で、時代と共に新しい生活様式が普及し、ビルを利用する人々が求める設備の水準も高くなります。
例えば水回りで言うと、80年代に登場したトイレのウォシュレット機能は現在、広く普及していますし、コロナ禍の影響もあり自動水栓も当たり前の時代になりました。
また、新たな建材が次々と登場し、より機能的になっています。
こうした世の中の動きを踏まえれば、自社ビルの長期修繕計画は、作成した当時と、実際にビル改修を実施するときでは私たちを取り巻く環境が変わっていくと考えられます。
建材の高品質化で修繕周期が長くなったり、物価上昇や税率の改正で費用の変動もあったりと、長期修繕計画は不確定事項が多くなっています。
ですから、ビルオーナー様は長期修繕計画を立てた後も、時代に合った修繕内容にするために定期的な見直しをする必要があります。
デザイン性や機能性も考慮する
デザイン性や機能性も考慮する
ビルオーナー様はご自身の建物に愛着があり、かつ普段から見慣れているために、建物が経年劣化で古くなっても、それほど気にならない方もいらっしゃいます。
例えば大規模修繕工事の外壁塗装を「中小ビルの改修ハンドブック」や「長期修繕計画ガイドライン」に沿って実施してきたのにも関わらず、気が付けば周囲の建物と比べて見劣りするようになってしまうケースもあります。
それは単に外壁を塗り替えるという程度でしか大規模修繕工事を行っていないからです。
定期的な出費となる大規模修繕工事ですが、時代に合った新たな機能やデザインを取り入れるための+αの資金も考えておくべきであり、プロの意見も聞きながら、予算がオーバーしてもある程度のバリューアップは検討したいところです。
自社ビルの維持・保全だけでなく、デザイン性や機能性を持ち合わせた収益ビルであり続けることも、長期修繕計画の重要なポイントです。